【ジロ2026】「フェルプスは陸上を走らない」ナルバエスが示した、強者を出し抜く“自分だけのゲーム”の作り方
2026年のジロ・デ・イタリア、皆さんはどのステージが一番シビれましたか?
総合争いも熱いですが、今大会の主役のひとりは間違いなくUAEチームエミレーツのジョナタン・ナルバエス(Jhonatan Narváez)でしょう。 初日にエースのアダム・イェーツを含む主力3人を落車で失うという、チームとしては最悪のスタートを切ったUAE。しかし、そこからナルバエスが爆発。第4ステージ、第8ステージ、そして第11ステージと、なんと個人ステージ3勝を大激走で叩き出しました。
なかでも、彼が第11ステージで見せた「読書家の一面」と「極上の戦術」が、ヨーロッパのロードレースメディアで大絶賛されています。
圧倒的格上のクライマーを前に、彼が思い出した「ある本の一節」
第11ステージのクライマックスは、実力派クライマーであるエンリク・マス(モビスター)との一騎打ち(2人の逃げ)になりました。 純粋な登坂力では、どう見てもマスが有利。ナルバエス自身、レース後に「登りでは間違いなくマスの方が強かった。本当にきつかったよ」と認めています。
普通ならここで力尽きるか、無理に相手のペースに付き合って自滅するところですが、ナルバエスの頭は冷静でした。彼はレース後のインタビューで、笑顔を浮かべながらこう語ったのです。
「以前読んだ本に、こう書いてあったのを思い出したんだ。 **『もしゲームが自分に不利なら、自分だけのゲームを作れ』**ってね。
マイケル・フェルプスが必死に陸上を走っている姿なんて、誰も見ないだろう? 彼はプールのスペシャリストなんだから。だから、登り(相手の土俵)ではとにかく耐えて自分を防御することだけに集中したんだ」
―― 欧州自転車メディア「Domestique Cycling」等のインタビューより
このエピソードの元ネタは、ビジネス・自己啓発書の世界的なベストセラー、ジェームズ・クリアー著の『Atomic Habits(複利で伸びる1つの習慣)』。
本の中では、水泳界の怪物マイケル・フェルプスと、陸上長距離のレジェンドであるヒシャム・エルゲルージの骨格を比較し、「才能を活かせる正しい土俵(ゲーム)を選べ」という文脈で登場します。
ナルバエスは「純粋な登り勝負」というマスのゲームを拒否し、「登りを耐えきり、下りとスプリントで仕留める」という自分のゲームにルールを書き換えたのです。結果、見事な tactical masterclass(戦術的傑作)でマスをスプリントで破り、大会3勝目を挙げました。
マリア・チクラミーノ(ポイント賞)への想定外の挑戦と、悔しい結末
この「自分のゲームを作る」精神は、その後のレース展開にも現れました。 本来スプリンターではないナルバエスですが、ステージ量産と積極的な逃げによって、なんとポイント賞ジャージ(マリア・チクラミーノ)の争いに大浮上。純スプリンターのポール・マニエ(スーダル・クイックステップ)を相手に、第17ステージでジャージを奪い返すなど、最終盤まで紫のジャージを巡る大激戦を演じました。
残念ながら、第19ステージのスタート直後に「前日のホテルへの移動中にバスに激突して身体を痛める」という不運なアクシデントによりリタイアとなってしまいましたが、満身創痍のUAEチームを牽引した彼の走りは、今大会のハイライトとしてファンの記憶に深く刻まれました。
ヨーロッパメディアを賑わせる「INEOSへの電撃復帰」の噂
そして今、このジロでの大活躍を受けて、ヨーロッパの移籍市場(メルカート)がナルバエスを中心に激しく揺れ動いています。
実はナルバエス、2025年にINEOSからUAEに移籍したばかり。しかし、イタリアの重鎮ジャーナリスト、ベッペ・コンティ氏らが報じたところによると、「2027年シーズンに向けて、古巣であるINEOS Grenadiersへの再移籍(復帰)がほぼ確実視されている」というニュースがパドックを駆け巡っています。
当初は「タデイ・ポガチャルの最強アシスト、兼クラシックのエース」としてUAEに長期残留すると思われていましたが、今回のジロでの「独力でステージを量産できる圧倒的なキャプテンシー」を見たINEOS側が、かつてのチーム生え抜きのスターを取り戻すべく強烈なオファーを出している模様です。
一方で、今回のジロでこれだけの結果を残したため、「UAE側もこの貴重なオールラウンダーをプロテクト(引き留め)するために動いている」という報道(CyclingUpToDate誌など)もあり、水面下でのマネーゲームはさらに加熱しています。
まとめ:これだからロードレースは面白い
強靭な肉体だけでなく、『Atomic Habits』の本から得たマインドセットを時速50kmの極限状態で実践してみせたジョナタン・ナルバエス。
彼が次にどのチームのジャージを着て、どんな「自分のゲーム」を作り出すのか。今年のストーブリーグは、彼の動向から目が離せそうにありません!
皆さんはナルバエスの今回の名言、どう感じましたか? 日常の仕事や生活にも活かせそうな深い言葉ですよね。
